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日本の「良きモノ」をもっと世界へ

dai tamesue
dai tamesue

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初めてメダルを獲得。3度のオリンピックに出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2018年3月現在)。現在はSports×technologyに関するプロジェクトを行うDeportare Partnersの代表を務める。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。著書『走る哲学』(扶桑社新書)など多数。


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為末 ネット検索で偶然、Knotのクラウドファンディングプロジェクトを見つけました。若い時から時計は大好きでしたが、ある記事で高級時計の原価がとても安いことを知って驚きました。「こんなにぼったくられていたなんて!」と思い、しばらく時計への興味が冷めてしまいました。でもKnotのプロジェクトを見て「これは良さそう」と直感し、応募したのです。
遠藤 創業間もない頃、2014年の6月から開始した「マクアケ」でのクラウドファンディングにご参加頂き、ご購入頂いたのですよね。当時は社員が2~3人で、私自身が商品を送る伝票を書いていました。そこで「為末 大」と書かれた伝票を見つけて驚きました。「トップアスリートの為末さんだろうか? 同姓同名の方なのか?」スタッフと話題にしたのを覚えています。
為末 時計のeコマースが一般的ではない頃でしたね。どんなモノでも、価格が安いものはクオリティもそれ相応。クラウドファンディングやネットで期待して購入しても、実物は期待値の70%以下というのが普通でした。でもKnotの腕時計は、期待値通りの100%。いや、それ以上のクオリティで、これで価格が1万円台とは本当に驚きました。
遠藤 現在のKnotはすべて「メイド・イン・ジャパン」ですが、当時のストラップはまだ日本製ではありませんでした。

hiromitsu endo
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為末 そのことは、私も大いに気になっていました。仕事でアジアを旅していると、どの国でも1万円台の腕時計を見かけます。この価格帯での時計作りのチャレンジは、どこでも行われてきたわけですよね。でも品質はどれもそれなりが多いのに、Knotのクオリティは価格をはるかに超えています。
遠藤 それは、これまでの時計作りの“常識”に挑戦して、製造現場から流通まで、お客様に届くまでの過程の無駄を徹底的に省いているからです。無理をして、価格を下げているわけではありません。これまでの日本の時計が高すぎるのです。腕時計はムーブメントや針やストラップなど数十の部品でできていますが、部品の製造原価は実は高くありません。腕時計では、部品一つひとつの仕上げや味付けで価格が大きく変わります。この過程に数多くの中間業者が介在し価格が上がっていきますが、この製造過程をシンプル&オープンにすることで、従来の1/3の価格で提供しているのです。

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為末 Knot では、高いブランドイメージとリーズナブルな価格が両立しています。私は時計が大好きなので、いろいろな時計を見てきました。でも、こんな時計ブランドは他にありません。世界的に見ても稀有な存在だと思います。
遠藤 Knotは「メイド・イン・ジャパン」の腕時計のエントリーブランドです。私たちの腕時計をきっかけに、ひとりでも多くの人に、時計の世界に目を向けてほしい。時計の面白さ、着ける楽しさを知ってほしいと考えています。価格が高いままでは、腕時計を楽しむ人がいなくなってしまう。Knotで「メイド・イン・ジャパン」の機械式腕時計を5万円から展開しているのもそのためです。そうすることで、腕時計の新しい未来が初めて拓けると思っています。

為末 その思いはユーザーにしっかり届いているようですね。しかも、日本ばかりでなく、アジアの方にも。
遠藤 ありがたいことに、この表参道のブティックに来店されるお客様は2割が海外の方です。海外出店した店舗でも現地の方に、私たちの思いはしっかり伝わっている、「メイド・イン・ジャパン」の私たちの製品の価値を理解し、高く評価して下さっていると感じます。特に、自分好みにカスタマイズできる点が、日本以上に評価されていると思います。
為末 アジアの国々も欧米のように、今や成長期から成熟期を迎えて「物欲よりも体験」「モノより思い出」の時代を迎えています。日本以上に海外での展開が楽しみですね。
遠藤 今後もアジア、さらに欧米にも海外店舗を展開していきます。


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遠藤 ジャパン・クオリティを世界へ。これはKnotのブランドコンセプトのひとつです。また、腕時計は、手元でパーソナルを表現する“リストウェア”であり、シャツやネクタイをコーディネートするように、ライフスタイルやその日の気分に合わせて選べたら、もっと楽しいものになるはず。そこで、時計本体はもちろん「メイド・イン・ジャパン」のストラップ作りにも力を入れています。その企画を考えているうちに、栃木のベジタブルタンニンレザーや、京都の組紐、日本独自の織物にたどり着いたのです。
為末 ストラップの選択肢が多いのは、そうした考えからなのですね。簡単にストラップを交換できるので、1本の時計がシーンに合わせてさまざまなスタイルで楽しめるのはオーナーとしては、うれしい限りです。ところで、日本の伝統技術を活かしたストラップを作ることは、なかなか大変だったのではないでしょうか。個人的な経験からそう思います。
遠藤 アスリートの枠を超えて活動されている為末さんですから、お分かりになるのでしょうね。ご指摘の通りです。これまでに経験したことのない苦労をしました。

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為末 やはりそうでしたか。私がそう思ったのは、日本の伝統文化、その継承の難しさを、その世界に触れるたびに感じるからです。日本の伝統文化は世界から見ても素晴らしい貴重なもの。しかし、その世界に触れるたびに「中心が濃すぎて、外の人間にはハードルが高すぎる」と感じることも少なくありません。伝統を守ることが、時代に合わせて変わることを拒否することになっている場合があります。
遠藤 そうですね。私もそう感じます。
為末 たとえば、京都のお茶屋遊びは素晴らしい文化です。でも体験して素晴らしいと思っても、いろいろハードルが高すぎて、継続して遊びに通うことは不可能です。結果、濃すぎて閉鎖的になってしまう。広がりを作ることができない。素晴らしい伝統技術にも、同じような閉鎖性があるのではと思います。他のものに活用しようと提案しても、拒否されることもあったのでは?

遠藤 「MUSUBUプロジェクト」では当初、伝統技術を持つ企業のご理解とご協力を得ることがなかなかできませんでした。訪問しても、門前払いは当たり前。「御社の技術でKnotのためにストラップを作ってほしい」とお願いに通うのですが、アポイントすら拒否される状況になり、アポイントなしで押しかけたこともあります。
為末 競技を引退しても、その競技や選手としてのキャリアや選手時代のやり方に固執してしまって「変われない」。その結果、セカンドキャリアに苦労するアスリートは残念ながら少なくありません。まるでアスリートの世界と同じですね。
遠藤 伝統技術を持つ企業の方は「このままでは未来がなくなる。何か新しいことに取り組まなければ」という危機感をお持ちです。でも、どう変わればいいのかわからないで迷っている。しかも自分たちの価値がよくわからない。でも外から光を当てることで、その価値に初めて気づく。皆さん、素晴らしい技術をお持ちなので、一度パートナーになっていただけると、これほど心強い存在はありません。


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為末 伝統のあるなしにかかわらず、これまで日本のモノづくり「メイド・イン・ジャパン」の製品の背景には「良いものは廃れるはずがない。良いものを作れば、その価値は評価されて売れる」という考え方があったと思います。
遠藤 そうですね。でも今は「良いものを作る」だけでは通用しない時代です。「MUSUBUプロジェクト」を通じて、私はそう確信しています。つまりこれまでとは違う分野で活用することで、技術を未来に残すことができますし、新しい魅力や価値を生み出すこともできます。
為末 昔のモノに固執しない。変わることを怖れずに、伝統や技術の新しい可能性に着目して挑戦する。それがこれからの、未来の日本のモノづくりの方向だと思います。もしかすると、クラフツマンシップと最先端のテクノロジーは、今は対極にあるものですが、融合する時代が来るように思うのです。
遠藤 これからも時計作りを通じて、Knotは新しい「メイド・イン・ジャパン」を創造し、その魅力を世界に発信していきたいです。為末さん、どうもありがとうございました。


撮影したのはここ!

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海外でのギャラリーショップ、そしてKnotのサービス展開拡大の足がかりとなるべく
2017年4月にオープンしたグローバルフラッグシップショップ。

Makerʼs Watch Knot表参道ギャラリーショップ
東京都渋谷区神宮前4-21-7  エスパス表参道 1F
営業時間 11:00~20:00 電話︎ 03-6447-0670


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